往復書簡、ふたりの本棚

本や音楽×日々の出来事、ゆき(うっちゃん)とりえ(やそりえ)の往復書簡

田舎の風、夏空に想う~『夜空の下で』益田ミリ~ゆきより

 お盆、毎年恒例になっている夫の田舎へ行ってきた。今はいない夫の祖父母の家が空き家となってあり、その家で育った義父たち三兄弟が集い草刈りなど家のメンテナンスを行う。一日目はその家で義父とおじらが雑魚寝して、二日目の昼頃私たち夫婦といとこが到着し、お昼を食べて午後には近所にある村のキャンプ場のバンガローに移動し宿泊する。何もすることはなく、周りを散歩したり昼寝をしたり高校野球を見たりして、夕方からのバーベキューを心待ちにする。合間にお墓参りはするけれど、大量の時間の中のほんの一瞬で終わる。

 のんびりした時間の中で、みんな気持ちよさそうな顔をしてゆったり田舎の空気を感じている。やることはないけれど、退屈ではないというような。各々が思い思いに故郷を感じて懐かしみ、慈しみ、風を受けては子どもの頃に心が戻っていくのが見てわかる。祖父母もいないし、親戚もほとんどが都会に出て行った。傾いた家はあるけれど、住める状態ではない。だけど失いたくなくて、心の中にある故郷を確かめて照らし合わせるように訪れているのだと思う。何もすることがない時間は、それぞれがタイムスリップしている大切な時間。

 

 夜にはたくさんの星が見える。虫の声と木々の匂いを感じながら、夫と広い夜空を見上げた。吸い込まれそうで世界に私と夫だけみたいだった。「来年は三人だね。」と夫が言った。「そうだね、楽しみだね。」と言いながら本当にそう思ったのと同時に、少しだけさみしい気持ちにもなったので、「でも二人でもまた見られるかな。」と言った。「見れるよ。」と夫が言ってくれたので安心して星空に身をまかせた。

 

夜空を見上げたって

そこには夜空以外ないのだけれど、

もしも、

もしも、夜空を一生見てはならぬというおきてができたとしたら

人の想像力っておとろえてしまうんじゃないか

 

 

 益田ミリさんの『夜空の下で』より。旦那さんに心無いことを言われてしまって、奥さんが怒ってコンビニに出ていく。ちょっと反省して奥さんの帰りをマンションの入り口まで出て待っている旦那さんが、星空を見上げながら思うシーン。この後、旦那さんは「なんつーか、息がつまるわ。」とつぶやく。私は「ほーんと、そうだよね。」と思わず言ってしまう。

 

 田舎からの帰り道、素敵な蓮畑がある。田舎の山と青空に映えて桃色の蓮がいきいきと咲いている。夜空を見上げて、過ぎ去ったことと遠い未来を思った昨日。今はこの晴天に今日の元気をもらう。

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