手紙回想~『花の降る午後』宮本輝~りえより
久しぶりにたっぷりと、雨。前回の手紙以来、10年くらい前の懐かしいメロディが頭の中に次々めぐるのを楽しみつつ、雨の日ならではのすべてが潤う感じを心地良く味わう朝。
この前、以前勤めていた会社で長く「相棒」だった男の子から手紙をもらった。彼とはその会社を辞めた去年から、時々こうしてやり取りをしてる。自分の近況と、相手を応援するメッセージ、共有した眩しいような密度の濃い時間について書いてある。「一緒に何かを始めるとき、ワクワクするんだよなぁと思い出しました」という言葉があって、嬉しくて、しばらく忘れていたその感覚に急に胸がぎゅっとなった。
ほんと、手紙は思いがけないプレゼントだと思う。次々に去っていく優しく馴染み深い時間を、突然甦らせてくれるよね。
そしてそのときどきに湧き上がる感情も、自分のもののようでそうではないと思う。目には見えない、手紙によって繋がった相手とわたしの間に、かつて確かに流れていて、そして今は熟成した時間が見せてくれる風景みたいだと思う。
「相棒」の彼からの手紙。働くことへの勇気や誰かと組むエネルギーみたいなものを思い出させてくれた。
そして、あなたがかつて旦那さんから受け取ったというカード!見たことないよー見せて見せて。楽しみにしてる。
まだ見てもないけど、好きなひとと離れて過ごす、しんみりしてきゅんとして、どこかホッとするような気持ちを思い出しちゃった。彼の書いた文字を見て、こんな字を書くひとだったんだーなんて新しくその人と出会った気がしたり、文章を紡いでくれた時間を愛おしく感じたり。ふたりのプロセスがどこであっても、好きになったばかりのときを思い出すような、そんな気持ち。
花の降る午後 宮本輝
ひとりになると、典子は浴衣に着替えて、虚ろな心で食事をとった。食事を済まして、彼女は改めて手紙を何度も読み返した。
哀しみは、亡き夫への思慕と思いやりに変わっていった。
亡くなった人からの手紙をきっかけに、出来事が進んでいく小説。手紙を読み返す中で変化していく気持ちがあるよね。
「相棒」からの手紙になんて返事しようか考えるのがここ数日の楽しみ。相手が今日もどこかで暮らしているからこそ、言葉を思いを交わし合うことができる。
彼の手紙にはおまけで素敵なカードも同封されていた。さっそくお気に入りのスペースに仲間入り。