往復書簡、ふたりの本棚

本や音楽×日々の出来事、ゆき(うっちゃん)とりえ(やそりえ)の往復書簡

ゆるやかな変化~『むかしはものをおもはざりけり』~りえより

 あっという間に新緑の季節が過ぎて、梅雨入り・夏へ向かう季節へ進んでいます。

 夏が大好きだから、こんなに着々と近付いてきてしまうと複雑な気持ち。もっとゆっくり一瞬一瞬を過ごしたいのに、と思ってしまう。
 
 長野に来ています。一日は戸隠神社にたっぷり身をゆだねて、次の目的地・飯綱高原へ向かうところ。
 どうやらあなたとは、旅の思い出が多くて印象深いものも多いので旅してるときに手紙を書きたくなる傾向もある気がする。
 昨日まで滞在した戸隠は、なんだか「あやし」という言葉が浮かぶ場所でした。小雨が降っていたことも影響してると思うけど、廃れているようでお参りするとパワーが溢れている火乃御子社や、奥社へ続く鬱蒼とした杉の並木。修験道の神社ということもあってか、厳しくそうそう大切なところは見せてくれないんだろうなという雰囲気を漂わせつつ、実際には大らかな感じもしたりして。二面性、みたいな言葉も浮かんだ場所でした。
 
 そして昨日から今日にかけては飯綱高原にいました。まだ標高の高いここでは紫陽花の季節を迎えていなくて、鶯と新緑、ドクダミや白い花が盛りの野の原を楽しみました。
 今回の旅で不思議だし興味深かったのは、戸隠から飯綱高原へ来てみて、なんだかコンディションが安定しないなーということ。気持ちのいい場所に身を置いていても、なんだかざわざわしたり黒い感情が湧いてきたりする。一種の毒出しなのかなぁと思ったり…でも、なんだか信州という場所が大好きで信頼していたので、自分の反応を持て余してしまうような、変な気持ち。
 
 あぁそっか、いつまでも同じじゃないんだなぁ、とそんなとき急に分かったりする。
 
 
逢い見ての 後のこころを くらぶれば
   むかしはものを おもはざりけり
            権中納言敦忠
 
 
 これは恋の歌だけど、恋愛だけじゃなくこういうことってあると思う。なんだか自分がバージョンアップされてしまう体験。ゆるやかだけれど、あるときハッと気付く確かな変化や芽生え。
 だれもが変化しないわけにはいかない。髪の毛も毎日抜けて、でも生えてきて。肌やからだの細胞も、一定の周期で生まれ変わっていく。
 こういう気付きがあると、そろそろモラトリアムも終えて社会に復帰せよということなのかなぁと思ってしまって焦ります。

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