往復書簡、ふたりの本棚

本や音楽×日々の出来事、ゆき(うっちゃん)とりえ(やそりえ)の往復書簡

はじまりの春 ~『夜と夜の旅人』 吉本ばなな~ りえより

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 春の手触りを内と外でしっかり感じたこの1ヶ月。桜が満開の日、一緒に近くて遠い旅に出て、うまれたアイデアが一週間でかたちになった。

 この、会うたびにスピードが加速していく感じ、わたしたちらしい。大好きな新緑の季節にスタートできることがとてもうれしい。

 

 往復書簡の形式がいいなと思ったのは、手紙の封をひらくときの気持ちを何度も感じたいと思ったから。飴玉をなめているときの、急ぐ気持ちを制して少しずつ味わうような攻防。

 ゆきちゃんとの手紙のやり取りは物語のよう。そしてそのときに読んでいた本や聞いていた音楽が鮮やかに「そのとき」の記憶と共に、洪水みたいな圧倒的なイメージで溢れてくる。わたしたちの側にはいつも本と音楽がある。しばしばお酒や料理も。

 

『夜と夜の旅人』 吉本ばなな 「白河夜船」より

 

ブルーのセーター、ベージュのタイトスカート。ロビーの床の白い色に映えて、彼女は主演女優のようにひとり、その端正な横顔でモニターの画面を食い入るように見つめていた。周りにいるたくさんの迎え人の誰よりも。きっちりとその空間に存在しているように見えた。

 

 

 よしもとばななさんが”吉本ばなな”としてデビューしたての頃の本、「白河夜船」(『白河夜船』『夜と夜の旅人』『ある体験』の三部作)から。『白河夜船』に出てくる“しおり”と似てる、と大学時代に言われたことがあって、印象深い一冊。

 何か、美しい予感とか期待とかを感じるときはいつも、この、恋する相手を待つ毬絵のイメージが、とめられない速度で立ち上がってくる。この文章と出会った大学生のわたしの世界の中で、深くプログラムされてしまった。

 このブログについて話していて思い出して、「白河夜船」を久しぶりに再読しました。なかなかに生気の薄い女の子がたくさん出てきて、でもそれぞれに満ちていく気配をまとっている。そのUncontorolableな、生々しくもたくましくもあるエネルギーは、季節が巡ってまた春がやってきたときの萌え立つ新芽のにおいのようでエロティックです。まさに、今年咲く直前のさくらのつぼみを見たときも感じたなぁ。

 

 このブログについてこの前カレーを食べながら話したけど、ささやかで、今の“自分”の目で耳で、見つけた毎日をあなたに伝えたい。道端の小さな花みたいな、ちょっとした出来事。

 本や音楽の言葉を介して、どんな日々が綴られていくのかな。楽しみです。